「こないだMさんの介助をした」

　こないだ研修の時、食器を破壊しまくった知的障害者のMさん（43歳♂）の介助だ。

9時に都立大学から歩いて10分位かかるハウス（大家さんと事業所の職員3人と住んでいる）に着く。Mさんは朝のシャワーを浴びていた。その間、昨日の残りのご飯とみそ汁で、おじやを作る。

Mさんは「ご飯食べる〜！おじや食べる〜！みそ汁飲む〜！」と叫
ぶ。元気なおっさんだ。食べながら「今日どこ行く〜？！浅草行く〜！渋谷行く〜！」とまた叫ぶ。叫ぶ度に俺も同じ事を言わなきゃならない（叫ばないが）。言わないと不機嫌になって危険だからだ。　　　　　　　

10時頃にハウスを出て、東急線で渋谷に行き、銀座線に乗り換えて浅草に向かう。電車の中では結構おとなしい。貧乏ゆすりや体を揺するが。
11時過ぎに浅草に着く。賑やかな所は嫌いみたいで、裏道をしばらく歩く。その間も「散歩する〜！後ろ行っていい〜？！（裏道行っていい？）、リュックかけていい〜？！（すぐリュックが下がる）」と叫ぶ。俺も同じ事を言う。
昼は天ぷら屋で食う。大きめのきゅうすがあるから、やたらと飲みまくる。お茶を入れるたんびに乾杯をする。その時も「乾杯する〜！お茶飲む〜？！」と叫ぶんで、やかましい。注文した天ぷらセットが来ると、一気にごはんだけ残して食う。そんで、ご飯に味噌汁ぶっかけて食う。俺が食ってる間もお茶を飲みまくる。するといきなり立ち上がり、Gパンを半分下ろし、シャツを入れて、ベルトを締める。外でも結構やる。

　天ぷら屋を12時半に出て、Mさんはどこに行くのか分からんが、歩き出す。「Mさん、どこ行く〜？」と聞くと「上野行く〜！行ってい〜？」と言う。俺は「い〜よ〜！好きな所行ってい〜よ〜！」と言うが、一体上野までどの位かかるんだ？と思いながMさんの後をついて行く。この日は20度以上あって、かなり暑い。思ったより早く、20分位で上野に着く。汗だくになったから、上着と下に着てる長袖の服を脱ぎ、Tシャツになり、上着を腰に巻く。上野に着いて、公園かどっかに行くと思ったら、今度は4号線（日光街道）沿いに入谷方向に歩き出す。一体Mさんはどこに行くのか？もう歩き疲れてきた。

1時過ぎに入谷に着き、Mさんはひたすら入谷を半径500メートル内を歩き回る。その間、「後ろ行ってい〜？ご飯散らす〜？（意味不明）リュックかけてい〜？い〜？！い〜？！（い〜？は絶叫）」を繰り返す。大通りはあまり好きではなく、ひたすら裏道を歩き回る。休まず歩く。本当に元気なおっさんだ。

　いい加減疲れて来たから、「何時におうち帰る〜？」と聞くと、「3時に帰る〜！」と言う。
　3時になり、地下鉄日比谷線の入谷駅からうちに向かう。都立大学で降りて、そぼろを作るから、挽き肉を買おうと思ったが、でかくて高いのしかなく、しょーがないから、一番安い、470円の鳥の挽き肉を買う。ビールも買うつもりだったが、売ってなかったか
ら、酒屋でエビスビールを3本買って帰る。

　ハウスに着くなり、Mさんはビールをコップに注ぎ、俺にも注いでくれて乾杯をする。一気に飲み干し、また注いで飲む。俺は飲めないから、飲んだ振りをしてまた乾杯する。あっという間に3本飲み干した。

　腹が減ったのか、Mさんは鍋に米を4合入れて、米を研ぎ、水を入れてご飯を炊く。「そぼろ食べる〜！玉子焼き〜！おつゆ〜！キャベツ炒める〜！」と怒涛の様に注文してくる。また研修の時みたく食器を破壊されるのはゴメンだから、さっさと作る。作っては
食べ、作っては食べ、そのうち腹が一杯になり、自分の部屋に戻ってしまった。テーブルや床は食べこぼした物が散乱している。もう5時半を過ぎて、報告書も書かなきゃならないから、さっさと拭いて、食器を洗い、報告書を書く。これでとりあえず仕事は終わり
だ。

後は6時に交代の介助者が来るのをタバコを吸いながら待つ。

しかし、よく歩いたな。4時間位歩いたから、15、6キロは歩いただろう。疲れたけどいい運動になった。まぁMさんの介助はこんなもんだと分かったからいーか。後は不機嫌になって、暴れなければいーや。

　6時ちょっと前に交代の人が来て帰る。ま、ここの事業所ではMさんが一番やっかいな人だから、何とかなるだろう。この先はどーなるか分からんが、大丈夫だろう。

おしまい