「今日はKさんの介助だ」

　今日からゴールデンウィークか。ヘルパーの仕事は盆暮れ正月はないっつーか、学生とか休むヤツがいるから、俺みたいな暇人にとっては稼ぎ時だ。休みは3日の水曜だけか。

　まぁ就職して今までこんな仕事ばっかやってたから、別に何とも思わんが。

　今日は久しぶりにKさん（62歳♂）の介助だ。雨が降るとか言ってたが、何とかもちそうなんで、井の頭公園に行く事にした。

　大岡山から渋谷に行き、井の頭線で吉祥寺で降りた。切符を取ろうとしたら、落としてしまい、おばさん（40代後半）が拾ってくれた。俺はお礼を言ったが、おばさんはしきりに俺に話しかけてくる。しばらく喋ってたら、おばさん（Kさん）は統合失調症で最近
旦那さんを亡くして寂しくて俺に話しかけたそーだ。

　まぁK（♂）さんといても独り言言ったり、「う〜」と唸ってるだけだから、話し相手が出来ていーかと思い、一緒に井の頭公園に行く事にした。K（♀）さんはよく喋る人で、病気のせいかたまに自分の世界に入る時もあるが、別に俺は全然迷惑じゃないし、とゆーより俺の方がこりゃいーやと楽しんでる。

　今日は東京撮影会なる団体が10人位のモデルを呼んで、あちこちて撮影してたから、音楽や大道芸人はあまりいなかった。でもKさん（♂）は興味深々で見ていた。
　昼になり、焼きそばと団子を食べた。3人でボートに乗ったが、オールで漕ぐボートだったから、なかなかうまく漕げず、グルグル回ってしまう。その間Kさん（♀）喋りまくり、身の上話したりしている。普段は渋谷のDCに行ってるそーだ。21歳の娘さんがいて、学生だ。Kさん（♀）の妄想が始まり、娘と付き合ったらいーんじゃないかっか、私が面倒見よ
うかと、何かと俺（アル中だとは話した）の事を心配してくれる。俺と結婚しようかと言われた時はさすがに、断ったが、Kさん（♀）も病気だし、滅多にこんな事もないだろーから、興奮したんだろう。ボートを降りて、Kさん（♂）とステージを見てたら、はぐれてしまい、探したが見付からなかった。雨も少し降ってきたし、帰ったんだろう。Kさん（♂）は「いなくなっちゃったね。どこかに隠れてるのかな？」と心配するから、しばらく探したが、いなかった。ま、住所と電話番号聞いたし、俺も教えたから、また連絡来るだろう。

　3時前に公園を出て、Kさん（♂）んちのグループホーム（知的障害の人が数人で一緒に暮らしている）に帰った。
　今日は何かと楽しい日だった。

終