その118 「変な患者」

　アル中ってゆーのは精神障害者（コントロール障害）なんで、俺も含め変な奴がいっぱいいる。

　今回はアルコール病棟で一番イカれてると思われるKを紹介しよう。

　ちなみに俺は二階。一階は女、三階はアル中で精神的にも重傷な患者で、一、二階とは別扱いだ。 　

Kはこの病院が二回目の入院で、他の精神病院に八回入院した事がある糖尿病でデブな44歳の頭にバンダナ、鼻の下に髭を生やしてるオッサンだ。他の患者からはデブKと呼ばれている。

　Kは宇都宮のボンボンで、今までうまい酒しか飲んだ事がないと豪語し、まずい酒しか飲んだ事がないなんて奴は馬鹿だと自助会で言って顰蹙を買っている。

　あと自称画家だそーだが、バブルがはじけて絵が売れなくなり、今はとりあえず老人ホームでヘルパーをやってるそーだ。同業者で絵描きかい！俺と一緒じゃねーか！

　画家だからといって部屋で絵を描いてるわけでもなし、とにかく落ち着きがなく、立ったり座ったり、ウロウロして鬱陶しい。みんなの嫌われ者だ。

　先日、夜中にドタバタうるさくて起こされた。Kが看護婦に追いかけられていた。

看護婦「Kさん止まりなさい！そのパンをよこしなさい！」
K「お願い！半分でいーからください！」
看護婦「ダメです！」

とKが持ってたあんパンを取り上げた。
　それ以降Kは部屋で食べなくなったが、場所を代えて食い続けている。こないだは自助会の帰りに餃子を買っていた。まー酒が止まっても糖尿病で足切断するまで懲りないだろう。

　ま、人の事なんてどーでもいーや。俺さえよけりゃいーんである。

おしまい