その111 「入院三日目」

　入院三日目ともなると、病院の様子が少しづつ分かってくる。

　まず、この病院では掃除屋がいない。ナースと各部屋の患者が班になり、一週間交代で掃除をする。患者といっても、酒を飲まなきゃただの人だし、ナースも他の病院よりずっと楽そーだ。せいぜい点滴、注射、検温、血圧を計るくらいで（他にもいろいろあるだろーが）ナースコールは点滴が終わった時くらいだし、夜中は静かだ。

　今日は午前中は点滴だけだったんで、本（今夜、すべてのバーで：中島らも）とマンガ（家畜人ヤプー：江川達也）読んだり、グラウンド（小さいが、昨日はそこで野球をやっていた）でコーヒー飲みながら、一服してたら、見かけないおばさんが女の子（15、6歳）の髪を切っていた。しばらく見ていたら何か変だ。女の子が知的障害に見える。俺は、この病院はアルコール病棟と精神科病棟があると気付いた。しばらくすると、デブな少年が来て、グラウンドでスキップをやりだした。何往復もするんで、きっとダイエットのつもりなんだろう。しかもスキップでする所がお茶目だ。精神科病棟の方が楽しそーだ。

　で、今気付いたんだが、だから売店に刃物（髭剃り、カッター、ハサミ）を置いてねーんだな。リストカットする奴がいるからなー。なるほどと思った。

　夜は7時から8時半まで断酒会の人が来る。この時は結構人が集まるんで面白そーだ。女の子も何人かいるし。

まーまだ先は長い。気楽にやろう。

おわり